心に沁みる、大人の童話集
 BOROの新作アルバム「不老不死な物語」

音楽プロデューサー
大輪 茂男
http://www.arlequin.co.jp/ohwa.html

 1979年に「COMING SOON」でデビューしたBOROが、今年で音楽生活三十周年を迎え、それを記念した新作アルバムを発表した。  
題して「不老不死な物語」。

まさに「もうすぐ始まるよ!」と言わんばかりのファーストアルバムタイトルから、今回の作品「老けも死にもしないさ!」というタイトルメッセージを眺めながら、アルバムに耳を傾けると、やはりBOROは健在だな!否、また次が「すぐ始まるよ!」という原点回帰への期待の予感を孕んで、その仕事ぶりは、まさに終わりのない輪廻転生する花のようだ、という感想をぼくに抱かせた。

今回のアルバムの音楽形態は、生のフォーリズムにヴァイオリンというスタイルだが、特徴的なことは、その中の何曲かがスパニッシュ的サウンドを基調としたというよりも、放浪するジプシーのため息のようなBOROのボーカルを中心に据えて、全体的に異国情緒を湛えたものになっているという点である。

実は知る人ぞ知るで、ロックシンガーBOROの精神的風土の中には、実はこのジプシー的異国感覚、世界中を放浪する旅人感覚を秘めたエトランゼ的ロック魂があるとぼくは常々思ってきた。

名作「大阪で生まれた女」は、確かにブルースロックではあるが、そこには旅に出る女の放浪哀愁があり、私がプロデュースした沢田研二、根津甚八らにBOROが提供してくれた歌「やさしく愛して」「銀貨」などにもその精神は躍動していた。そして「モスクワの仔猫ちゃん」(梓みちよ)「インダスリバー」(田中裕子)等という彼の手になる歌を聴いたことのある者ならば、そこには日本人が生んだ日本人ならではのジプシー歌集の隠れた最高傑作のあることを疑わないであろう。

そんなBOROが久々にリリースした今回のアルバムは、やはりぼくたちファンの期待を裏切らず、加えて、知る人ぞ知るという彼のもうひと味違った世界を覗かせながら、成熟した男の優しさ溢れる素敵な「大人の童話集」アルバムとなっている。

「童話」とは子供の為に書かれたものをいうのではない。
心に子供の「童心」を持ち続けた人が、この世に紡ぎだす文字、音楽、絵などを通じて表現した、心温まるメッセージなのである。
BOROの今回のアルバムはまさにそれであろう。
今回ほど、BOROが「歌う童話作家」である事を痛感したアルバムはない。

アルバムは大きくわけると4つの部類で出来上がっているかと思う。

今回のアルバムの特色でもあるエトランゼ的サウンドと、それに呼応した歌唱世界である「私革命の記念日に・・・」「月と星の物語」など。
次に、元来のBOROならではのご当地ソング的ミデアムロック「大阪は王様」「神戸BAND物語」など。
そしてワルツを主体とした明るい呼びかけ的メセージソング「不老不死な物語」「ランナーの靴音」等々。
「ニニロッソを聴きながら」「プロペラのない飛行機」「ロバと羊たちのセレナード」等々の珠玉のロックバラード。

さて、アルバムは一曲目の「私革命の記念日に」からして、全体を予感させるスペイン風カンテフォンドのボーカルと、妖しげなアラビアンナイト風なサウンドが、一対の男女の愛の革命日を、時空を超えたドラマに変革してゆき、これから始まるアルバム童話のオープニングとなっている。

そこに、遠くから聞こえて来る、ワルツ、ジンタのリズム・・・・ 二曲目はアルバムタイトルでもある「不老不死な物語」
ジンタッタ、ジンタッタ、BOROがあたかも、大道芸人の呼び込み屋になったかのように、苦しむ人々を、悲しみの人々を、美しい希望の世界へと導こうとする花売りとなる。

では、人々に永遠の不老不死の希望を与えるBOROの花とはなんであろうか。それは祈りにも似たBOROの「歌声」そのものであると、聞く者はやがて気づくであろうか。
東洋では古来より、汚れた泥の中でも美しく咲く「蓮華」の花が、この汚れた世に生きる人間の心の中に咲く希望の花の喩えとして尊ばれて来たが、BOROは、そのような花を皆の心に咲かせたいというのであろう。

「ニニロッソを聴きながら」はそのアンサーソングとも言える。
そこには、まさに泥の中に咲く美しい花のあることを教えてくれた、かけがえのない人との出会いと別れが綴られているのだが、この歌は、私の好きな美しいバラードに仕上がっている。

そして『ロバと羊たちのセレナード』「星と月の物語」の、何とも言えぬBOROの新境地とも言えるボーカルを聴いてほしい。
シャウトではないが力強く、優しいがシナやかに、そこに織りなすBORO自身の演奏によるメランコリックギターの響きが揺れ動く世界は秀逸である。

一風変わった曲は「Cashiの木2009」である。
牢獄に入った少年と樫の木の成長物語だが、この曲などは、現代からどこか遠い旧約聖書の世界の中に引き込まれるような、不思議な大人の童話世界とさえなっている。

以上、まとまらぬライナーノートになったが、とにかく皆さん!
a 今回の「ボロ(BORO)を聴きながら」、皆さん、大人の奏でる童話集を味わって下さい。 共鳴したり、励まされたり、ちょっぴり悲しくなったり、そして勇気が湧いたら、又、このアルバムの一曲目に戻って下さい。
僕たちの心が、きっとBOROの奏でる童話で「革命」されていますよ。幸せに向かって!